「やーだ、本当にがっかりだわ」と、妻のキムが手紙を読みながら言った。
「どした?」と僕。
「私の高校の同窓会のお知らせなの。
12回目だって。
この7月ね。
卒業してからそんなになるなんて信じられない」
封筒をごみ箱に投げながら言う。
「行きたくないっていうことかな」
いつもの客観的な口調で僕が聞く。
「その通り。
もう10年以上もクラスメートにあってないもん。
そうだ。
わたしそれだけ故郷に戻っていないってことだわね。
これじゃあ私が誰だか忘れているわよね。
私の方も大半の人の顔がわからなくなっているから、恥ずかしい思いをするのはやだわ」
僕も、真夏の熱い時期に中西部の田舎町に旅行するなんて、あんまり気乗りがしなかったので、強く行こうとはいわなかった。
が、ちょっとキムに悪いなって気持ちにもなっていた。
僕が経験したような楽しい高校同窓会の思い出が彼女にはなかったからである。
僕なら、何を置いても、同窓会は必ず出席するだろう。
同窓会の話はしばらく忘れ去られていた。
そんな、ある晩、仕事から帰ってきたら、キムがほぼ半時間近くの長電話をしていたことがあった。
彼女は電話での話しが嫌いだったので、こんなことは珍しかったのだ。
ようやく電話を切ったとき、誰からの電話だったか聞いてみた。
「ええ、リンダ・トンプソンからだったの。
少なくとも、彼女の名前は前はそうだったわ。
高校のときのクラスメイトなの」
「で、どんな用事だって、なんであんなに長く何を話してたんだい」
好奇心が高まっていた。
「同窓会に来るかどうか確かめるためだって。
で、あとは昔話と、誰が最近何処にいるかって話よ。
ちょっと長話し過ぎたようね」
キムが応えた。
「実際、みんなのことを聞くのは楽しかったわ。
あんまり長いこと忘れていたから、もう完全に違った世界の人たちのようだった。
だけど、彼女の電話で、たった昨日のことのように思えてきたの。
全部思い出したわ。
本当に変ね」
「そう。同窓会には行かないって話したと思っていいのかな」
「ええ、話し始めたときはそう言ったの。
でも、しばらく話した後には、ちょっと考えてみるから、後で連絡するわねって行ってたの。
でも、行くってことになったら、あなた、怒るわよね?」と聞いてくる。
「いいや。怒らないよ」と応えた。
「僕の同窓会には何度か出てくれただろう。
だから、一回くらい、君の同窓会に出るのは我慢しなきゃって思っているんだ。
お前に任せるよ。
でも、本当に行くとなったら、休暇願いを出さなくっちゃいけないから、早めに計画を立てなけりゃだめだよ。
いいね?」
「ありがとう、あなた。
理解があるのね。
今週中に決めるわ。
約束する」
その週末まで、キムはさらに二本、他のクラスメートから電話を受け、熱心に同窓会出席をせがまれた。
その電話がある度、彼女は旧友との友情を温める機会のことを考えて興奮し、結局、出席することに決めたのであった。
僕らは二人とも休暇願いを提出し、いろんな雑事を片づけ、2、3日休暇を得て旅行することが可能になった。
子供たちは、50マイル離れたところに住んでいるキムの妹に預けることにした。
子供たちはいとこに会う機会ができて大喜びだったから、この点については問題がなかった。
両隣のお家が留守中の我が家を見てくれて、新聞や手紙を預かってくれることになっていた。
同窓会について話をする時は、いつもキムがちょっと心配そうな、おどおどした感じになっていたのは明らかだった。
「グランビルは、何年も経ったけれど、変わりはないのかしら」
ある晩、妻は話を始めた。
「あそこに行ったのは、もう何年も前だわ。
最後の時は、家の家族がアリゾナに引っ越す前だからもう15年も前になるわ」
「まあ、国内でもあの地域の小さな町は、この数年間、あまりいい待遇を受けてこなかったからね。
その点については、悪いほうに変わったと思っていた方がいいかもしれないよ。
でも、観光をしに行くわけじゃないんだ。
君のクラスの友達のことに集中しようよ。
君の高校時代のアルバムはどこにあるんだい」
「そう、それはいい考えだわ。
予備の寝室の屋根裏の収納にあると思うわ。
ちょっと探してくるわね」
キムは、アルバムを見つけてきた。
僕たちは日曜の午後の間ずっとそれを見ながら過ごした。
妻は、とっても楽しんでいたようだった。
彼女はアルバムのページをめくりながら、クラスの仲間たちのことについてコメントをしていた。
キムの写真を偶然見掛けた時には、二人とも大笑いをしてしまった。
針金のようにガリガリにやせ細っていて、その黒髪はまっすぐに、背中の中頃まで伸びていた。
「うわあ、ずいぶん変わったんだな。
全然気が付かなかったよ」
クラスの女の子の中には、とてもキュートな子がいるとは思った。
でも、キムが高校時代からとっても変わったのを考えていて、その女の子たちにはあまり注意を払わなかった。
妻はベティ・ホプキンスを指差した。
彼女はいつも故郷に戻って来るときはクイーンのように扱われていた。
「女の子たちはみんな彼女にやきもちを焼いていたわ。
でも、私はあまり彼女のことが好きじゃなかったの。
自分が男たちの憧れの的だって、お高く澄ましてたのよ。
ベティが話もしなかった女の子たちがクラスに何人かいたわ」