10月中旬
最近、スティーブにとって、土曜日の午前中はのんびりと過ごす時間になっていた。バーバラがいないおかげで、片付けなければならない「ハニー・ドゥー・リスト」(参考)もなければ、自分の時間を奪う者も誰もいない。テレビ局が本日の放送に選んだ大学フットボール試合は、興味を惹かない試合だったが、それでも、ちょっとした家事をする間のバックグランド音楽のようなものとしてテレビをつけておいた。
トーストしたチーズ・サンドイッチとチップスを昼食として食べながら、スティーブはいろいろ思いをめぐらした。昨夜、キムが接近してきた時、どうして自分はそれを拒んだのだろう? キムと関係を持ったとしても、バーバラには、もはや、浮気を非難する権利はない。それに何よりキム自身が乗り気だったのだ。なのに、どうして?
スティーブは、キムはバージンではないと睨んでいた。バージンである理由が見当たらない。彼女の言葉使いや行動から、彼女はスティーブに何をしたいと思っているか、スティーブに何をしてもらいたがっているか、はっきり認識できていると分かる。今のところ、誰も傷ついてはいない。だが・・・スティーブは、自分自身がどうしたいと思っているか分かっていなかった。人生が段々ややこしくなってきている。
電話が鳴った。台所にある電話の子機では、発信者の番号が表示されない。スティーブはとりあえず電話に出ることにした。
「スティーブ! 調子はどう?」
「やあ、バーバラ・・・」 スティーブは、電話してきたのはキンバリーがかもしれないと思っていた。最悪でも、バーバラの父親か母親ではないかと。「・・・何か用?」
「用事というか、今度の木曜日にある夫婦カウンセリングについてだけど、次の月曜日に変更しても大丈夫か、確かめたかったの。私、仕事の会議でオマハに行かなくちゃいけなくなったので・・・」
「いや、それはダメだよ。月曜には、街の中心地に予定されている新しい連邦関連のビル建設の契約で、ワシントンから議会の職員一行が来ることになっていて、その人たちを接待することになっているんだ。これは絶対に逃すわけにはいかないし、接待するとなれば、一日中付っきりになる可能性が高い。僕もエスコート役の一人になっていて、連中をディナーに連れて行ったり、それから・・・まあ、どういうことか、分かるだろう?」
「分かったわ、あなた・・・いや、スティーブ」
バーバラの声には責めるような気配はなかった。スティーブの断りを額面通りに受け取った。次の言葉を出すとき、バーバラはためらった。スティーブは、バーバラが意を決して深呼吸する音を聞いた。
「スティーブ? ・・・あのことについては何か・・・」
「いや」 抑揚のない声でスティーブは答えた。彼には、バーバラが何を頼もうとしてるのか話しを待つまでもなかった。たとえどんなことでも、答えはノーだ。
「スティーブ、気持ちは分かるわ・・・ヒューストンさんが私にも分かるように説明してくれたから・・・だから気持ちは分かるの、あな・・・スティーブ」
バーバラは少し間を置いた。
「全部を元通りにして、すべて問題がない状態にするためなら、私はどんなことでもするつもりなんだけど、でも・・・」
「いや、バーバラ。君は僕が感じていることを分かっていない。それは、この上なくはっきりと分かる。そういうことを言うのはやめることだよ。そのようなことを言う君の気持ちは、真実の気持ちじゃないし、これからもそれは変わらないだろう」
「オーケー、オーケー、分かったわ・・・怒らせるつもりはなかったの。ただ・・・まあ、よしましょう。じゃ、また今度。体に気をつけてね」
スティーブはこみ上げていた怒りを飲み込んだ。深く息を吸って落ち着く。
「ああ、じゃあ、また」
「じゃあ」
二人はほぼ同時に受話器を置いた。
電話の後も、長い間スティーブは腹が煮えくり返ったままだった。過剰反応だと責められたり、バーバラに「気持ちが理解できる」と言われたりと、彼は気が狂いそうだった。長い時間の後、ようやく怒りが鎮まったが、その後は、これまでにないほど深く気分が落ち込み、陰鬱になってしまったのだった。
********
その日、陽が沈みかかる頃に、キンバリーがやってきた。スティーブは、玄関前の通路に車が来た音を耳にし、玄関を開け、右手にいっぱいになったスーパーの買い物袋を提げて、ポーチに駆け上がってくる彼女を見たのだった。スティーブを見たキムは、彼の腕の中に飛び込むようにして抱きつき、熱のこもったキスを彼にした。
「私にもキスして!」
「はあ?」 からかい気味にスティーブは答えた。「なぜ僕が君のことを恋しいと感じなくちゃいけないんだい?」
キムはわざと膨れっつらをして見せ、素早くスティーブの股間に手を伸ばし、握った。半立ちになっているのを知り、キムは質問しなかった問いに対する答えを得た。そして、にっこり笑顔になり、嬉しそうに、もう一度、握りなおした。
スティーブは、素早く身を引き、キムの手を引っ張って家の中に入れ、ドアを閉めた。近所に住む人が目撃し、スティーブの軽率な行動を報告する機会を窺っているかもしれないのだから。・・・誰に報告するのか分からないが。
キンバリーの熱のこもった挨拶は、伝染性があって、さっきまで陰鬱になっていたスティーブも、さっと気が晴れていた。もっとも、嫌な思い出や、メランコリーになっていた理由などは、心の片隅に留まったままではあるが。
「昨日の夜は、どこに行ったんだい? 両親の家?」
「うふふ・・・ママもパパも、明るい瞳をした、こんなに可愛い娘が、この街に帰って来てることすら知らないわ」
彼女の口調には、ほんの少し棘があったが、スティーブはそのわけが理解できなかった。だが、そのことを追求する時間はなかった。問いかけようとすると、再びキムの唇が迫ってきて、口を塞がれたからである。
「オースティンの大学寮に戻っていたのよ」
後に、彼女は、照り焼きチキンとポテト・サラダを食べながら説明した。
「ポルノ、好きよね?」
スティーブは頷く他なかった。実際は、それほどポルノが好きというわけではない。だが、アダルトショップから買ってきたビデオがある。昨夜、リビングのコーヒーテーブルの上に放置し、それをキムに見られたのだ。今更、あまり好きじゃないと言っても、キムには通じないだろう。
「でね? 今夜、一緒に見ようと思って、良い感じのポルノを持ってきたのよ」
艶かしく誘うように、そう言いながら、立ち上がり、スティーブの膝の上に腰を降ろした。そして、ねっとりとしたディープ・キスをしてくる。何分にもわたるキスが続き、スティーブは、空気を吸うために、やんわりとキムを押して離さなければならなかった。
キスの後、彼女が跳ねるように立ち上がり、彼の手を引いて立たせても、抵抗できず、されるがまま立ち上がる他なかった。キムに連れられ、リビングへと入る。彼女はソファに腰を降ろした。
「これ、持ってきたの。一緒に見よう?」
嬉しそうに、せがむ。キムは頬を赤らめ、興奮していた。早くも乳首は固くなっているようで、バギーのスウェット・シャツの上からも輪郭が見えていた。それに息づかいも乱れている。
スティーブは無言だったが、彼の返事は顔に浮かんでいて、キムはそれを読み取った。ビデオカセットを入れてきたビニール袋をテーブルに放り投げ、楽しくて仕方ないと言わんばかりの様子で、ビデオのラベルを見る。その中から1本を選び、踊り跳ねるようにしてビデオが置いてあるところに行って、カセットを入れた。そして、いそいそとカウチに戻ってきて、スティーブの隣に座る。キムは彼の手を取り、自分の脚の付け根にあてがった。すっかり興奮しているらしく、すでにスウェットパンツのその部分はすっかり湿っていた。
ビデオは、厳密に言って、素人作品と言えるものだった。導入部分は一切なく、いきなり本篇が始まった。突然、大音量の音楽が鳴り出し、スティーブもキンバリーもびっくりした。キムはリモコンを取り、ボタンを押して音量を下げた。
性的に興奮しているキムに対して、スティーブも仕方なく興奮して見せていたが、それでも、どこか後ろめたいところがあった。本当に自分は、義理の妹と深い間柄になりたいと思っているのだろうか。よく分からない。何か正しくないことのように感じていた。キムがポルノに夢中になっていることに、むしろ興ざめする思いだったし、状況がますます制御できなくなっているのを感じ、腹の奥底に不快感が湧いてくるのを感じていた。だが、この状態を正すにはどうしたらよいか、スティーブには分からなかった。
画面に映ったシーンは、パーティのシーンだった。大音響の音楽がリビングルームを満たしていたが、その速いテンポのテクノ音楽は、画面の中の行為にふさわしい。狭い部屋と隣接する小さなプールを舞台に、6組ほどの男女が、ペアで、あるいは3人組で行為をしているのが見える。全員が全裸だったが、一人だけ、背が高い赤毛の女の子だけは、ブラウスを着たままだった。とはいえ、ブラウスを除くと何も着ていない。
リズミカルに動く男たちの尻が次々と映し出され、それぞれの男根が、相手とする女たちの女陰に打ち込まれる様子が画面を満たす。男たちのピストン運動は、例外なく、速いピッチで、荒々しく激しいものだった。女たちは、乱暴に打ち込まれるたびに、痛々しいほどに体を揺さぶられていた。だが、それに抵抗する女は一人もいなかった。どの女も、このような荒々しいセックスを歓迎している様子だった。
カメラが右に動き、画面がプールサイドの空気マットで行われている3Pをとらえた。カメラマンは、そこにズームしていく。中心となっている女の子は、四つん這いになっているが、手は、片手だけマットにつけていて、もう一方の手は大きな男根を握り、それを夢中になってしゃぶっていた。彼女の背後には、痩せた、年若の男がいて、陰部に出し入れを続けている。
その女の子も、自分でも少し動いていて、後ろから突き立てる男に尻を打ち返していた。彼女は、咥えていた肉棒を口から離し、後ろを振り返って、男に何か指示を与えた。そして、カメラに撮られているのに気づき、嬉しそうににやりと笑い、淫らに舌舐めずりして見せた。
「何てことだ・・・」
スティーブはつぶやいた。その女の子はキンバリーだったのだ。男たちの方には、知ってる者はいない。彼の隣りに座り、一緒に画面を見ながら、キンバリーが、くすくす笑った。楽しそうに。
「なかなかのもんでしょ?」 息を弾ませている。
スティーブは画面に見入った。乱交を行っている女性は、彼が知っている、あの愛らしく、快活なチアリーダをしていた高校生ではなかった。画面の中の女は、激しいセックスに狂った獣だった。あの無邪気で可愛い女の子はどこに行ってしまったのだろう? こんなのは間違っている。だが・・・興奮をもたらすものでもあった。徐々に、画面の中で二人の男に弄ばれている女が、自分の義理の妹には見えなくなっていった。ただの、性欲処理のための道具としか見えなくなっていく。
ビデオの中、乱交は続いていた。プールサイドのキンバリーの身体を分かち合う男は、今や、さらにもう二人加わり、4人になっていた。新しく加わった男の一人が、プレートを差し出した。キムは、指で片方の鼻の穴を塞ぎ、もう一方を使って、プレートに線状に置かれた白い粉を一列分、吸入した。その後、四つんばいの姿勢から身体を起こし、ひざまずいたまま、少しじっとし、吸入直後の陶酔から回復するのを待っている。スティーブの隣に座るキンバリーは、嬉しそうにハミングしながら見ている。
「やりたくなったら、いつでも私にやっていいのよ。分かった?」
スティーブは唸り声をあげ、曖昧に返事することしかできなかった。
本当に自分はキムのあそこの中に分身を埋め込みたいと思っているのだろうか? はっきりしなかった。いや、もっと言えば、自分のあそこが彼女のそばに近づくことすら、避けたいと思っていた。だが、どうしてよいか分からない。
スティーブは気分が悪くなるのを感じていた。ビデオの中でキムとセックスをしている男たち、その4人全員、コンドームをしていないのだった。
「それに、他にももっとビデオがあるのよ」 キンバリーはうわの空で話している。
この日の朝にスティーブを襲った陰鬱とした気分が、最大級の力を持って再び彼に襲い掛かった。この時の欝とした感情の方が、もっと酷い。コーヒーテーブルにはさらに9本、ビデオカセットが置いてある。キムがそれを一緒に見たいと興奮している様子から察して、その9本とも、彼女が主人公になっているのは確かだった。この若い娘は、一体、何人の男たちに身体を与えてきたのだろう。彼女が様々な性感染病に冒されている可能性が数え切れない。スティーブはますます沈んだ気分になっていった。
ふと、彼は、自分が沈んだ気分になっていることにキムが気づかないのを不思議に思い彼女の方を見た。キムは、相変わらずテレビ画面に全注意を傾けていた。ハアハアと荒い呼吸をして見入っている。腰も太腿もスティーブの身体にぴったりくっつけたままだ。いや、さらにもっと興奮を高めているようだった。隣に座る彼女の体から、激しく興奮した女の体臭が匂ってくるのにも気づいたスティーブだった。
スティーブは、彼を取り巻く様々な悩みから抜け出られなくなっていた。バーバラには裏切られた。彼女は他の男を求めたのだ。夫婦は破綻したのだ。なのに彼女は離婚を許さない。夫婦であり続けるよう要求している。それは、つまり、スティーブにいつまでもこの心痛を抱き続けろと言っているようなものだ。そして、今度は、バーバラの妹も・・・愛らしく、穢れのない可愛いキンバリー・・・そのキムが、彼女の股の間に割り込みたがる男ならどんな男でも迎え入れる淫乱娘になっていたとは。
そして、いま自分は、そのキムと一緒にいる。
キムとやりたい。ペニスを後ろからキムの女陰に突っこみ、彼女に悲鳴を上げさせ、何度となく激しいオルガスムを味わわせてやりたい。自分は、このビデオに写ってる他の男たちと全然変わらぬ最低の男なのだ。そして、キムは自分に性病を移すだろう・・・そうなってしまうはずだ・・・
スティーブは、自分を打ちのめす様々な攻撃に対処できなくなっていた。何も考えられない。理性的に対処できない。
頭の中でスイッチが切れるのを感じた。事態をより良くするために自分にできることは何もないのだ。もう、頑張るのはやめた。自分の行動に関して、それがもたらす結果について考えるのもやめた。様々な結果があるだろうが、すべて考えないことにする・・・一つを除いて。その一つさえあれば、あらゆる問題から解放される。そうとしか考えられなくなっていた。
突然、キムが自分から状況を変える動きを取った。やにわに立ち上がり、スウェット・パンツを乱暴に降ろしたのである。足をけるようにして靴を脱ぎ捨て、足先からズボンを脱ぎ捨てる。彼女は下着を履いていなかった。キムはスティーブを自分の横に引き寄せ、彼のカーゴ・ショートパンツ(参考)を引き摺り降ろした。チャックも降ろさずに。スティーブはすでに裸足だった。彼は一日中裸足で過ごしていた。
スティーブは抵抗しなかった。次にどういうことになるか分かっていたが、それは、対処しなければならないジレンマには、もはや、なっていなかった。むしろ、気持ちの上では楽になっていた。自分に対して、自分を取り巻く世界に対して、これほど気楽になったのは、何ヶ月ぶりのことだっただろう。
「早くして!」
キンバリーは、息を荒げながら、座りなおした。横寝になり、顔をテレビに向けている。後ろに手を伸ばし、スティーブを自分に引き寄せている。
「早く!・・・私の中に突っ込んで!」 キムは半狂乱になっていた。
スティーブはすでに挿入可能なほどに勃起していた。彼はずっと勃起し続けていた。テレビの画面の中の娘が実在性をなくした時から。今や、彼女は生身の女ではなく、ただのセックスのおもちゃにすぎない。
「早く突っ込んで!」 キムが急かした。
無意識的に、スティーブは背を丸め、キンバリーの肉付きの良い尻に体を寄せた。キムは片足を持ち上げ、足首をスティーブの尻の後ろへまわした。彼女の陰部が開かれた格好になったのを受けて、スティーブは腰を突き出した。亀頭がキムの外唇の中へと滑りこむ。そこは滴り濡れていた。ゆっくりとスティーブのペニスが彼女のバギナの中へと、一気に滑り込んでいった。
キムは、待ちに待っていたことがようやく叶えられた強い満足感に、深いため息をついた。腰をくねくねと揺すって、スティーブの分身をさらにしっかりと咥えこんでいく。確実に収まったと感じると、再び手をのばしてリモコンをつかみ、テレビに向けてスイッチを押した。
キムは、スティーブに向けて尻を動かしながら、脚と同じように、片手を彼の背後にまわし、尻肉をつかんで自分に引き寄せる動きも始めた。より深く、より強く押し入れるよう、スティーブにせかす。
「このまま続けて・・・やめないで・・・」
スティーブは、キムに促されて、次第により強く、より奥深くへと出し入れをし始めた。自分の妻の妹である。だが、スティーブは、それを考えてはいなかった。この女は、ただの淫乱女なのだ。ビデオに写ってるじゃないか。
何分も経たないうちに、スティーブの勃起は、これまでにないほど太く、硬くなっていた。キムも、ビデオに映る自分の姿を見ながらも、よがり声をあげて、スティーブに感謝の気持ちを表した。それから間もなくだった。二人とも、過剰に興奮していたのだろう。キムが切羽詰まった声をあげた。
「あっ、いく、いきそう!・・・中にして・・・お願い、スティーブ・・・私の中に・・・」
スティーブは、出し入れのペースを倍化した。キンバリーの女陰にペニスを力強く叩きつけ、深々とえぐった。
何秒か後、スティーブもキムも、身体を密着させたまま、激しく硬直させた。どちらも強烈なオルガスムに全身を洗われていた。ビデオを見続けていたキムは、初めて目を閉じ、苦痛に近い表情を顔に浮かべながら、身体を震わせた。その後、ぐったりと体から力が抜け、ソファのクッションに横たわった。頭はソファの枕に乗せ、顔をテレビ画面に向けたままの姿勢だった。
射精をしたばかりだったが、スティーブは再び腰を動かし始めた。最初はゆっくりと、しかし、次第に深々と力強い打ち込みへと変わり、義理の妹の女陰を突き上げていく。スティーブの動物的な欲望の発露は、キンバリーの欲望の発露とマッチし、二人とも互いに相手の性器に自分の性器を叩きつける動きになっていった。何ら愛情も、美的なものもない行為だった。二人とも、自分の欲望を満たすことにしか興味がない二匹の野生動物になっていた。
二人は、それから何時間か、どちらかが疲労のため続けられなくなった時だけ休憩したものの、それ以外はずっとセックスを続けた。やがて、二人とも限界に達し、転がるようにして相手の肉体から離れ、ソファの下、床の上へと横たわった。そして、ふんわりとしたカーペットの上、全裸のまま眠りに落ちたのだった。
夜中、スティーブは、一時、起き上がり、自分とキムがぬくもって眠れるよう、廊下のクローゼットから毛布を取り出した。キムに毛布を被せると、半分眠ったまま暖かい掛け布に丸まり、スティーブが彼女の横に身を横たえると、彼のところに寄り添い、すがりついたのだった。
* * *
スティーブは、義理の父に手を差し出し、二人は握手した。二人とも玄関先に立ったままだった。
スティーブは、彼としっかり目を合わせて、見た。バーバラの父親がどれだけ強靭か、それを示すものを探した。前と変わらず、精力的で、しっかりと元気そうだった。健康状態も良好なのだろう。スティーブは、ロイド・モンゴメリが、毎朝3マイル、ジョギングを続けていることを知っている。今日という日は、ロイドからかなり多くのエネルギーを奪うことになるはずだ。それを乗り切るために、持てる力のすべてを使わなければならないだろう。
「ロイド」 スティーブは挨拶代わりに名前を呼んだ。
ロイドは笑みを浮かべて迎えた。「おお、よく来てくれた。さあ、中に・・・いやあ、ほんとによく来てくれた。会えて嬉しいよ。バーバラに電話をして、こっちに来るように言おうか?」
今日は月曜日で、バーバラは仕事の日だった。だが、スティーブが家に来たと言えば、バーバラは喜んで午後に休みを取るだろう。そうロイドは思ったのである。
「いや、いや、それには及びません」 スティーブはあえて説明しなかった。
ダイアンから頬に挨拶代わりのキスをされた。スティーブは、少しではあるが、これに驚かされた。この義理の母は、普通、こういうことはしなかったからである。もっと言えば、そもそも、ダイアンが、彼に対して、こればかりであれ愛情を持っているとは知らなかった。だが、悲しいことではあるが、バーバラとああいう風になっている以上、いまさら親愛の気持ちを示されても遅い。
「今日、来たのはバーバラとは関係がないことなんです・・・いや・・・関係があると言えば言えますが、大半は、キムのことについてなんです」
ロイドとダイアンは、困惑した目で互いを見やった。事情が飲み込めない様子だった。
「腰を降ろしませんか?」
スティーブの言葉に、あわててダイアンはソファの反対側にある安楽椅子に手招きした。ダイアンとロイドは静かにソファに腰を降ろし、スティーブが話し始めるのを待った。
スティーブは、厳粛な顔で二人を見ながら、ブリーフケースを脇の床に置いた。彼は、ブリーフケースを開けはしたが、中から何も取り出さなかった。二人に伝えなければならないのがだ、正直、話したくない。だが、二人ともこれについて事実を知る必要があるのだ。自分が話さなくとも、いずれ彼らは知ることになるだろう。だったら、自分から聞いた方がましなのではないか。
スティーブは深呼吸をした。
「キムのことですが・・・」 ゆっくりと話し始めた。「彼女はあることにのめり込んでいます。そのことを、お二人はぜひ知っておく必要があると思って・・・」
彼はもう一度、大きく息を吸った。そして、ようやく口にした。
「キムは、ドラッグの習慣に嵌まっています」
ロイドとダイアンは、目をぱちくりさせた。ロイドはごくりと唾を飲んだ。彼もダイアンも、スティーブが言ったことを理解するのに時間が掛かっているようだった。
しばらく経ち、ようやくロイドが口を開いた。
「ああ・・・確かに、マリファナを試したことがあったのは知ってるが・・・」
スティーブは頭を左右に振った。
「ハードな麻薬です」
ロイドとダイアンは、ゆっくりとスティーブの短い言葉を噛みしめた。ダイアンは右手を伸ばし、夫の左手に触れた。そして指を絡め、しっかりと握り合った。二人ともしばらく考え込んでいた。
突然、ロイドが声を上げた。
「そんなはずがない! そんな兆候は見たことがないぞ。本当なのか、スティーブ? 本当は何か見間違えをして、悪く解釈したんじゃないのか? そうじゃないと言いきれるのか? いいか、これは軽い冗談じゃ済まされないことなんだぞ。中途半端なことだったら、ただでは済まされないのは知ってるのか?」
スティーブは目を輝かせた。むしろ、怒りを表わしてくれることを歓迎していた。自分の代わりに父親自身が怒りを示さないようだったら、彼は、怒りを引き出すようなことを何もしなかったことだろう。だが、ロイドが言ってる言葉は、ここ数ヶ月、彼がスティーブに、バーバラの不倫について「過剰反応」するなと言っていた時の言葉と同種ではあった。
スティーブはブリーフケースに手を入れ、中からビデオのケースを取り出した。それからビデオを出し、立ち上がってテレビのところに行き、プレーヤーにセットした。テレビのスイッチを入れ、リモコンを持って席に戻る。義理の両親に鋭い視線を送りながら、彼は再生のボタンを押した。
ロイドもダイアンもスティーブを見るだけで、テレビの方には目もくれなかった。しかし、聞き間違いようがないよがり声、うめき声、そして湿っぽい啜るような音がスピーカーから聞こえてくると同時に、二人の顔に驚愕の表情が浮かび始めた。二人ともテレビ画面に目をやると同時に、ショックのあまり、口をあんぐりと開けた。
「一服つける? キム?」
画面に映っていない人物が問いかけた。明らかに若い女の子の声だ。テレビ画面の中、ロイドとダイアンの18歳になる娘が勃起したペニスを口から出して、返事した。カメラがズームアウトし、キムの隣に立っている娘の姿を映した。キムは嬉しそうにその娘を見上げ、うんと頷いた。
「でも、その前に私のあそこにキスをして」
娘はそう言い、キンバリーは従順にその命令に従った。裸の娘の股間を熱心に舐め始める。長時間、それは続いた。名も知らない娘は、キムが充分に従順さを示したと満足すると、彼女の前に手鏡を差し出した。その鏡には、すでに白い粉が3本、きれいに並べられていた。キンバリーはストローをもらい、1列の半分まで、片方の鼻に吸い込んだ。それから素早く鼻を変え、列の残りを吸い取った。そして、仰向けに横たわり、陶酔感に浸った。
だが次に、キムの前に男が現れ、立ったまま、勃起で横たわるキムの頬をぴたんぴたんと叩いた。キムは反射的にその勃起の根元を握り、自分の口に向けた。そして、一気にひと飲みでほぼ全長を口の中に入れ、すぐさま頭を振り始め、男を喜ばせる。
しばらくして、巨体の黒人がゆっくりと彼女の後ろについた。その男は、最初の男にキムが奉仕する様子を見ながら自分でペニスをしごいており、すでに勃起していた。キムは後ろに男が来たのに気づき、身体を起こして膝立ちの姿勢になり、尻を振って男を誘った。黒人は、早速、膝をつき、2、3回姿勢を調節した後、挿入を始めた。キムはしゃぶっていたペニスを吐き出し、頭を後ろにひねって、しかめつらをして黒人を睨んだ。
「バカ! TJ。そこをやるんだったたら、充分、潤滑をつけてくれなきゃダメって知ってるでしょ!! 私の場合、お尻の穴がきついから、最初から乾いたちんぽはムリなのよ・・・ほら!・・・そこにKYのチューブがあるはずよ・・・最初にそれを使って・・・じゃなきゃ、もう2度とお尻はさせないから!」
キムは黒人に荒々しい声で文句を言い、黒人は従順にそれに従った。彼は、隣のテーブルから潤滑ゼリーを取り、それをキムの肛門に注意深く念入りに塗りこんだ。カメラマンはぐるりと回りながら位置を変え、アナルセックスの様子が捉えられるよう、キムの後ろ側に回りこんだ。
黒人のペニスは際立って大きいと言うわけではなかったが、キムのアヌスは小さいのは事実だった。亀頭が入り口のリング状の筋肉の門をくぐるにはかなり時間が掛かった。だが、そこを過ぎると、スムースに出し入れができるようになっていた。アヌスへのピストン運動が始まると、キムは中断していたフェラチオを再開した。
スティーブの向かい側のカウチから聞こえてくる泣き声が、ビデオから流れてくるセックスやフェラチオの音を上回るほど大きくなってきた。スティーブはリモコンをテレビとビデオに向け、その両方のスイッチを切った。急に静かになる。聞こえるのはダイアンのすすり泣く声だけになった。
スティーブは冷静な声で訊いた。
「ロイド? これでも中途半端なことですか? 私は、また、過剰反応していると思いますか?」
ロイドは顔を上げた。惨めなほど打ちひしがれた顔をしていた。彼が、スティーブの質問を聞いていたかすら、不明だった。確かなことは、ロイドは返事をできなかったこと。涙が頬を伝っていた。
スティーブは目を閉じた。あんな仕返しのような質問をすべきじゃなかったと思った。これほどまでに、打ちひしがれた男女を見るのは、気安いことではない。先のロイドの言葉に感じた苛立ちは、すでに消えていた。
「ロイド?」 スティーブは優しく問いかけた。「それにダイアン?」
二人は、今、互いに身を寄せ合い、悲しみを分かち合い、慰めあっていた。しばらく時がたってから、ようやく、二人はスティーブの方に向き直った。
「ロイド・・・それにダイアン・・・申し訳ない。だが、お二人とも、これは目にしておく必要があったものなんです。大変なことだったでしょうが、他に方法がなかったので。キンバリーがハード・ドラッグの中毒となっていて、同時にポルノビデオの世界にかかわっていること。その事実を知り、完全に納得していただきたかったのです」
それを述べ、長い沈黙に入った。ロイドが気を持ち直すのを待った。
ようやくロイドが声を出した。かすれた声だった。
「スティーブ・・・私こそ申し訳ない。君の言う通りなのだよ。娘は、ドラッグの問題を抱えている。しかし、どうしてあんな・・・あの手のことにかかわってしまったのか、全然分からない」
ロイドははっきりと言葉にして言うことができなかった。だが、誰もが彼の言おうとしている意味を理解していた。
スティーブはブリーフケースから他の9本のビデオを取り出し、カウチの横、床の上に積み重ねた。ロイドとダイアンは、何か恐ろしいものを見るような眼でそれを見つめた。
スティーブは立ち上がり、話し始めた。
「僕の知る限り、キムが出ているビデオはこれだけです。どれも、楽しいビデオではない。2、3本は、吐き気がしそうになるようなものです。さらに、ある1本については、キム自身が僕に見せたがらなかった。どれが、その1本かは、僕は知りません」
スティーブは、そこまで語り、二人の質問を待った。二人とも質問したいことがあるはずだった。だが、どちらもそれを訊こうとはしなかった。あまりにも深い絶望なのだろう。スティーブは頭を振り、ドアの方へ歩き出した。
「どうか・・・彼女を助けて欲しい」
スティーブはできるだけ早くその場から立ち去ろうとしながら、二人に向けて要望を投げつけた。
遅れてロイドも立ち上がり、スティーブの後へと急いだ。玄関ロビーでスティーブは振り返り、ロイドを見た。彼は、この、たった20分ほどで10歳は老け込んだように見えた。ロイドは引き戸を手で押さえながら、スティーブに手を差し出した。
「こんなことを言って、間違っているのは分かるが、あのビデオを見つけたりしてくれなかったら良かったのにと思っているよ。だが、教えてくれたことには感謝している。キムについての事実を知らなければ、そもそも、助けることなどできないのだから」
スティーブは頭を横に振った。
「いえ、感謝などしないでください」
スティーブも声がかすれていた。ロイドと目を会わすことができない。
「ロイド? 訊かれなかったから話さなかったが、キンバリーは、あのビデオを僕の家で僕と一緒に見たのです。そして置いて行った」
ロイドの目が大きく見開いた。不安の表情が顔に広がった。
「ロイド・・・キムはこの2週間、連続して、週末を僕のところで過ごしています。彼女は、お二人には、大学があるオースティンに行っていると信じ込ませているでしょうが、実際は僕のところにいたのです」
ロイドは頭を振った。頭の中で考えた思いを受け入れるのを拒むように。
スティーブは素早くピックアップトラックへと進み、乗り込んだ。そして、振り返りもせず、車を出したのだった。