テセウスという英雄がいました。この英雄にまつわる話には、例えば、ミノス王とか王女メディアとか、アリアドネーとかミノタウロス、ダイダロスとかイカロスが出てきます。落ちゲーの傑作「ぷよぷよ」に出てくる強敵牛人ミノタウロスなら8歳児でも知ってますです(くしょ〜、何で俺がクリアーできねえんだよ〜)。
そこんとこの話はぜーんぶ省いてのパイドラです。英語読みではフィードラ(Phaedra)。Phaedraというタイトルのアルバムをヒットさせたプログレッシブ・ロックのグループが大昔あった記憶があるんだけど、思い出せない。(googleかけたら、タンジェリン・ドリームだって?! 違うような、あやふやな〜〜)
パイドラはテセウスが一通り英雄的活躍を終え、落ち着いた後の、彼の妻の名前です。テセウスはバツいち組で、前妻アンティオペーにはヒッポリュトスという息子がいました。
このヒッポリュトス君、なかなかの好青年というかマジメ美青年です。父親テセウスは英雄色を好むとの言葉どおり、女性関係は奔放でした。上に書いた王女メディアなんか、彼のために一生を狂わせてしまいます。しかもヒッポリュトス君の実母とも別れちゃって今は別の女性と結婚しているわけで、その父親への反動からか、ヒッポリュトス青年は異性には目もくれない! 清純そのもので、狩りやスポーツに夢中です。
「キャーッ!愛しのヒッポ様〜〜」
娘たちの声が聞こえても、「ふん、けがわらしい!」といわんばかりに無視しまくり!
このような態度に対して、「それはいけません!」とお怒りをくだす神がいました。ご存知、アフロディーテ奥様です(やんや! やんや! ←多少、死語)
アフロディーテ奥様は、きちんと愛に燃える時には燃えさかるべし! の価値観の代表なのです(そうだ燃えるのだ! おー!)
で、お怒りを感じたアフロディーテ奥様は、ヒッポ君にイジワルする目的で継母にあたるパイドラに、ヒッポ君にラブラブになるよう仕向けました。
継母とは言え、母にあたる女が息子に強いラブラブ激情を燃やすことになってしまうのです。すでに夫テセウスが抱き寄せようとしても、その気が湧かないパイドラ奥様。
Anne-Louis Girodet de Roucy-Trioson 1800 「テセウスの抱擁を拒むパイドラ」 Phaedra Rejecting the Embraces of Theseus
女心はよく知りませんが、こいつはチト苦しいかもね。2人は毎日、顔を合わせる間柄です。パイドラは一線を超えてはいけないと言う倫理と自分の恋愛感情の板ばさみになり、日に日にやつれていくほどでした。恋やつれ。
身も心も結ばれたい気持ちでやつれていくパイドラ奥様の絵。
Alexander Cabanel 1880 Phedre
それを見かねた乳母が、ヒッポ君にパイドラの心情を伝えてしまいます。パイドラの思いを叶えさせてやってくださいと、ヒッポ君に言ってしまったのでした。
#「思いを叶える」って、よーするに、アレをするってことだよなあ・・・
だが、ヒッポ君は一本気の純潔純粋熱血青年です。そんな話を聞かされて、かえって怒りを感じてしまうのでした。乳母はもとより義母のパイドラにも直接、ガンガンと正論で責めまくるのでした。
ここでパイドラの心情・・・
「ああ、ヒッポ様にあのように責められてしまった。・・・もはや、ヒッポ様に私の思いを叶えていただくことはできなくなってしまった。・・・今までの私の気持ち・・・、それが無駄になってしまった。いや、むしろヒッポ様は、このことをおおやけにしそうな勢い。ああ、私はどうしたらいいの・・・?」
結局、パイドラは自殺してしまいます。遺書には「ヒッポ君が私によこしまな劣情をいだき、私は犯されてしまったので、自殺します」とあった。おおお! そう来るかよ!>パイドラ
これを見た英雄テセウス、ヒッポ君に怒りを向けます。ヒッポ君は、自分にはやましいことはないと反論しますが、真相は父には話せません。父親テセウスはヒッポ君に呪いをかけてしまいます。結果、ヒッポ君は事故にあい死んでしまう。
その後、真相を知った父テセウスは悲痛に悔恨にくれるのであった。
***
一番悪いのはアフロディーテ奥様ですね。そんな困るような遺書を書かれても・・・(とほほ)。でも、次に悪いのはヒッポ君だと僕は思います。間違っていますでしょうか。
***
ちなみに「パイドラ」で検索したら、パイドラの話をベースにした映画があったことを知りました。
「死んでもいい」Phaedra (1962)ギリシャ映画
監督:ジョルジュ・ダッシン
主演:メリナ・メルクーリ、アンソニー・ホプキンス
あらすじ:
船舶業の大富豪のギリシャ人と結婚した若妻フェードラ。そのギリシャ富豪の息子アレクシスは、新しい義理の母フェードラと恋に落ちる。二人の運命の結末は・・・? 二人の関係が発覚し、家を追われたアレクシスは、ギリシャの断崖沿いの道をスポーツカーに乗って疾走するのであった。
ポスターとスチールがこれ。


これに主演したメリナ・メルクーリについても調べました。
メリナ・メルクーリ:
1967-74のギリシャの軍事政権に対してレジスタンス運動を展開した闘士。80年代にはギリシャの文化大臣に就任。パンテノンから略奪された形でロンドン大英博物館に持ち去られていた文化財を,本来の場所であるギリシャのアクロポリス博物館に取り戻す運動も展開。
かっちょえ〜お方だと思います。