さて、今回はこの絵。
Georgione 1504 "Sleeping Venus"
ルネッサンスに入り、裸体画がおおっぴらに描かれるようになってビーナスも盛んに描かれるようになります。
で、このジョルジオーネという画家のビーナス像は古典中の古典となった絵らしいです。
その後、この「横たわるビーナス」という主題で、いくつも絵がかかれることになりました。上品で、均整がとれた綺麗な裸婦絵だと思います。ちゃんと股間を手で隠してますが、自慰をしているのとは違うようです(笑)。
さて、しかし、僕の関心はやはり、愛欲の女神であり浮気し放題のアフロディーテ(=ビーナス)を妻に持った夫のヘパイストスにあるのでした(笑)。
彼はどのような神だったのでしょうか?
その前に、大雑把に神々の系譜をおさらいしたいと思います。
ずっと前に、アフロディーテの誕生のところで、ガイア(大地)とウラノス(天)の交わりの話をしました。
あんまりウラノスのセックスがしつこいのでガイアは嫌気がさして、子供のクロノスにお父さんであるウラノスのペニスを切断させたこと。その切断されたペニスが海に落ちて、白濁が泡となり、その中からアフロディーテが生まれたこと。そんな話でした。
このお父さんのおちんちんを切っちゃったクロノスは、姉のレアと一緒になり、これまたたくさん子供を作ります。だが、予言により、クロノスは自分の息子に王位を奪われると知る。
そこで、なんとクロノスは生まれた子供を次々に食べちゃうのでした。ひどい話です。これには妻のレアも怒りを感じ、末っ子のゼウスだけを策略をめぐらせて助けます。
さて、ゼウスは成長しました。そして、兄弟たちを助けに向かいます。まず、父のクロノスに毒を盛って、飲み込まれた子供たち、つまりゼウスの兄弟姉妹を吐き出させます。
その後、父方一派と戦争を起こします。10年近く戦いをし、結局、ゼウス一派が勝利、世界を治めます。その後できたゼウス体制の世界は、神々の合議制世界でした。そのメンバーはクロノスとレアの子供たちと、ゼウスの子供たち(の一部)から成っています。
・まずはクロノスとレアの子供たちから
ゼウス : 大ボス。エロ親父。
ヘラ : ゼウスの姉であり、ゼウスの正妻。
ヘスティア : 「かまど」の意味の名。家事の神。
デメテル : 穀物の女神。
ポセイドン : ゼウスの兄。海の神。
ハデス : ゼウスの兄。冥界を担当。
・次にゼウスの子供たち
アテナ : ゼウスの頭から生まれた知性と戦略の女神。永遠の処女。
アポロン : アルテミスと双子。予言、音楽、医術、弓術などの神。
アルテミス : 山野を支配する狩りの女神。
アレス : ゼウスとヘラの息子。戦いの神。頭悪し(笑)
ヘパイストス : ゼウスとヘラの息子。あるいはヘラ単独の息子。工芸・鍛冶の神。
ヘルメス : 商売、旅行、泥棒の神。ゼウスの連絡役。
・ちょっと関係なさそうな神
アフロディテ : 彼女については省略。
ディオニソス : 酒の神。新興宗教の教祖。変人。
だいたい、こんなメンバーでお話が進みます。彼らはオリンポスの12神と呼ばれています。12人になりませんが、そういう細かいことは突っ込まないほうが良いのかもしれません。
なかなかヘパイストスの話に進みませんが、一応の前提事項の確認でした。
ーーーーーー
一休みしてアフロディーテ奥様のお姿を拝見することにしましょう。
Titan 1538 "Venus of Urbino"
見て分かるように、このティチアーノの絵は、先のジョルジオーネの絵をモデルにしてます。目を見開いてこっちを見ているのが、かえってそそられます。まだ手で股間を隠してますね。後ろの方では子供は何をしているのでしょうか?
かようにお昼寝がお好きなアフロディーテ奥様ですが、ご主人のヘパイストスは、オリンポスの他の神々が遊んでばかりいるのに対して、一日中、働いてばかりいるまじめ男です。鍛冶場で煤にまみれ、汗をかきながら、働きつづけているのです。
基本的に働くのが大好きな男なのです。そして、技術も備えている。人間の最初の女性であるパンドラを作ったのも彼です。彼の作業場には、ロボットのような自動人形もいたと言います。言うなればワーカホリックの有能エンジニアのようなヤツです。
で、その間に、アフロディーテ奥様は、彼の兄のアレスの情婦となったり、他の男たちと愛欲に溺れているんだから(笑)。ヘパイストスには、かなり親近感を覚えますね。
また、休憩タイム!

Vecchino Title unknown
もう股間を隠すのはやめてしまったみたい(笑)。
さて、ヘパイストスは、醜い男とされています。神の中で一番醜い。また親近感を覚えます(笑)。
しかも、「足曲がり」とされています。これには二つ説があって、ひとつは英雄ヘラクレスを巡って父ゼウスと母ヘラが夫婦喧嘩をしたとき、ヘパイストスは母の味方をして、ゼウスの怒りを買い、両足を持ってぶん回された挙句、遠く海のかなたに投げ飛ばされ、着地が悪くて足を曲げてしまったと言う説。
もうひとつは、実はヘパイストスは母ヘラが、ゼウスがアテネを一人で生んだのを妬んで、彼女一人で産んだ子供であったのだが、生まれた子があまりにも醜いので、ヘラが彼を崖から突き落としてしまい、それが元で足が曲がってしまったと言う説。どちらにしてもひどい話です。
女遊びばっかりして、家では威張ってばっかりいるバカ親父の暴力に震える子供、あるいは浮気な亭主にヒステリックになった母親に虐待された子供です。アダルト・チルドレンですよ、ヘパイストスは。「足曲がり」というのも、象徴的であって、実は精神的トラウマを背負っていることを表しているような気さえしてきます(深読みし過ぎだって:笑)。
そんな、神々の中でも「何か」を背負っているような感じのヘパイストスが最高の美人のアフロディーテを妻にし、さんざん浮気される。なかなか、神話も深いものがあると思いました。
暗い話だったので、最後もお口直しでアフロディーテ奥様のお姿を。

Titian "Venus and a Pianist"
もう隠すも何も、すっかり覗かれ放題(笑)。