さて、前の書き込みのボティチェリの「ビーナスの誕生」。
その絵の左から息を吹きかけている西風の神、ゼファという名だと書きましたが、これは英語読みで(Zephyr)、ギリシャ語でゼフュロスだそうです。抱っこしているニンフはクロリスと言う名前。
ギリシャの地理的位置からすると、西風とは地中海の暖かい空気を運ぶ穏やかな風でしょうね。日本なら南風だろうけど。
この穏やかな西風の神が一目惚れしてかっさらってきたクロリスは、花を支配する力を与えられ、花の女神のフローラになります。そこの変身そのものが描かれているのが、次のボティチェリの絵。今度は画面右側にそれがあります。
ボティチェリ 1477-8年 「春(プリマべーラ)」
右端の緑色の肌の人が西風神。さらってきたクロリスを着地させます。
すると、花のドレスを着た花の女神(右から3番目)に変身しました。
周りに花びらが散ってます。この人が歩くとそうなるらしい。お掃除が大変です。
で、画面真中で首をかしげてたたずんでいるのが、ビーナス奥様。
今日は服を着てます。少し残念。でも、この服にも、妙なエロスを感じてしまうアタクシです。その理由は、後日。
今日の主人公は、ビーナス奥様ではなく、その左側で踊っている三人娘です。例えば、次の絵。
サー・バーン・ジョーンズ 1885年 「三美神」
彼女たち、三美神(Three Graces)と呼ばれるらしいです。ギリシャ語ではカリスたち(複数形カリテスCharities)と呼ばれてます。美、優雅、豊穣、芸術的センスなどなどの女神だそうです。神々の大ボス、ゼウスの娘。
母親はいろいろ説があって分かりません。(普通は、逆で、お母さんは分かるけどお父さんが分からないんだけどね)。ビーナス奥様お付きの従者というお仕事。
図柄的には、
・腕を組みながら輪になる、裸三人娘
・真中の一人は後姿
という形で、いろんな画家が作品を残してます。
配列には順番があって、左から、エウプロシュネ(Euphrosyne)、タレイア(Thalia)、アグライア(Aglaea)という名前。三人がそれぞれ何を表すかは、いろんなことが言われてますが、左から、「愛欲」−「純潔」−「美」と言う解釈があります。お尻を見せている人が「純潔・貞節」を示すというのは、意見が一致している模様。やっぱり、大事なところはひとまえには晒せません。
女性の身体的な「美」しさと、心に秘めた「情欲」。その二つを精神的な美としての「純潔」さが間を取り持ち、バランスを保つ。そのような女性が、サイコーなんだよってことっすかね。
ラテン語由来のグレイス(grace)という言葉は、身体・精神の両方の美しさを備えたときに使える言葉らしいっす。
それほどのバランス統制力があるとなると、回りの人をまとめ上げる力もすごいわけで、ギリシャ語の方のカリスからカリスマ(charisma)という語が生まれました。
バランスという点では次のラファエロの絵がものすごい安定感。
ラファエロ 1504年 「三美神」
ふくよかな女性がお好きな人には、次のルーベンスがお勧め。
ルーベンス 1638年 「三美神」
ところで、一番上のボティチェリ「春・プリマべーラ」。 ビーナス奥様の頭上にキューピッド(こいつはビーナス奥様と愛人マルスの間にできた子供)が目隠しをして、矢で狙っています。この矢(金の矢の場合)で射抜かれると、最初に目にした人が大好きになってしまいます。狙われているのは、三美神の真中の娘。「純潔」娘です。 あーあ。彼女は誰を見ているのでしょう? 視線的には画面の外かなあ・・・? 矢が放たれた瞬間、その男に惚れちゃって「純潔」失っちゃうのかな・・・。 それとも、見ているのは右端の男か?
彼はヘルメス(英語では、マーキュリー)っていうヤツです。頭が切れるヤツです。 なかなか好青年に描かれてますね。
ちなみに、高級ブランドバッグのエルメスとは、このヘルメス(商売・旅行の神様でもある)からとった名前。まさか、真中「純潔」娘、高級ブランド品に夢中になるってか(苦笑)。