カチャッ!
男は、小さな金色の南京錠をかけた
「よし!
さて、僕は仕事に出かけることにするよ。
帰ってくるまで、良い子でここにいるんだよ。
あまり退屈はさせないつもりだから大丈夫」
女は、最後の言葉が何を意味してるのか分からなかった。
今、女は籐の椅子に体を縛り付けられている。
苦痛はなく、心地よい。
リクライニング式の椅子で、背もたれと腰掛け部分が分離するタイプ。
男は背もたれの部分を倒し、女の頭がわずかにあがるだけにしておいていた。
脚はかろうじて床に着くか着かないかの位置。
両手首には柔らかい皮の拘束具。
椅子の両側、肘掛に縛り付けられている。
両足首も椅子の脚に縛られ、広げられている。
男は、女の腰の回り、両腕の下、そして両太腿に幅広の皮バンドを巻きつけていた。
そのため、女には体を動かせない。
両方の乳首には、乳首挟み。
痛みを覚えるほどではない。
だが、気にならないわけではない。
甘い痛みが二つの乳首から伝わってくる。
2本のバイブを体に埋め込まれていた。
腰に巻いた貞操帯で押さえつけられ、施錠される。
最後の仕上げは、目隠しと、バンダナの猿ぐつわ。
バンダナを噛ませただけで、口の中に何かを詰め込むわけではない。
言葉は発音しづらいが、声が出せないわけではない。
男は準備を終えると一歩引き下がり、自分の作品を嬉しそうな目で堪能した。
女の額にキスをして言う。
「じゃあ仕事に行くね」
「土曜日までなの?」
女はそう訊こうとする。
だが、バンダナのせいで、出てくる声は、「むおーんあえんお?」
「すまないが、何を言っているのか分からないよ。
でも大丈夫、ちょっといなくなるだけだから」
男は嬉しそうだった。
女は縛りを引いて、ゆとりがあるか確かめた。
ほとんどゆとりはなかった。
あきらめる。
頭を後ろに倒して、椅子の背もたれに休ませた。
何も見えなければ、動くこともできない。
視覚を奪われたため、他の感覚が研ぎ澄まされているのを感じる。
埋め込まれたバイブと乳首を挟むクリップに、肉体が反応を始める。
繰り返し時間を置いて周期的に襲ってくるオルガスムス。
時間の感覚が消えていく。
縛りに抵抗するように身をよじる。
バイブレータのリズムに合わせて全身の筋肉が、ひとりでに緊張と弛緩を繰り返す。
現実にはたった15分しか経っていなかった。
男は玄関のドアから外に出て、車を走らせた。
これなら女は男が出て行ったと思うだろう。
実際は100mほどしか車を動かさなかった。
車を止め、施錠し、歩き戻る。
向かいの家に行き、ドアをノックする。
中からカップルが顔を出した。
男と女の共通の友人。
このカップルとは親密な関係にあり、1年近くプレーをしてきた間柄だった。
普通は前もってプレーの内容を計画しておき、4人で一晩一緒に過ごす。
でも今回、男は女を驚かすことに決めたのだった。
「準備ができたよ」
男は、カップルに言った。
何を言っているのか彼らなら分かるだろう。
「忘れないでね、彼女に誰だか分かるようなことは一切しちゃいけないよ」
3人は通りを横切った。
家の玄関を開ける。
男はカップルたちを先に入れた。
男は今回は参加しない。
ただ、見ているだけの役割だ。
玄関が開いた音に女は頭を向けた。
男の名前を呼ぼうとする。
だが、出てくる声は、またも「あむあ?」
誰も返事をしない。
女は不安感が募ってくるのを感じた。
もし強盗だったらどうしよう?
この格好で何ができるの?
静かな足音が近づいてくる。
女は頭をうな垂れ、もっとよく聞こうとする。
二人いるような足音。
この部屋に知らない人間がいるのを悟り、女は髪の毛が逆立つのを覚えた。