裏庭にある、あの木
暗く、威圧するように生えている
巨大な木で、黒々とした枝を大きく広げている
一番低い枝は、地面から1メートル半の高さ
螺旋を描くように枝が上へ上へと伸びている
パーフェクトと言っていい、その姿
庭は高いフェンスで囲まれている
近所に住む人も、誰も覗き込むことはできない
それに一番近い家も200メートルは離れている
女はじっとその木を見つめていた
思い出が一杯の木だった
心の中に、イメージが浮ぶ
皮のロープが、あの枝から垂れ下がっているところ
そして、あの木にぶら下げられている自分の姿
背中に腕を回され、皮ロープで十文字に縛られている
あの木に吊るされたまま、男に奪われたときのことを思い出す
目隠しをされて、あの木の根元に縛られ放置されたときのことを思い出す
木を見つめながら、溢れるほどの思い出があることに気がつく
素敵な思い出
痛みに満ちた思い出
ぼんやりとしながらも女は思う
引っ越しのとき、あの木を持っていく方法がないものかと