自由な気分
こんなに自由な気持ちになったのは久しぶり
私の中の悪魔たちは、一時的に、霧の中に姿を消している
ほとんど永遠に消えないと思っていた筋肉のしこり
それがほぐれていく感じ
元気に風を切って歩いた
片手でスカートの裾を上げて、もう片手にはパンを入れたかごを持って
パンは、アヒルやガチョウに与えるパン
アヒルたちにエサをやったのはずいぶん前になってしまったわ
今日は、風が強くて、どんよりと雲が垂れている
いつ、嵐になってもおかしくない
黒い雲が太陽を遮り、真昼なのに夕方のように見える
だが、彼女はそれに気づいていない
アヒルやガチョウが私を取り巻く
羽根をバタバタさせながら、私の足を突っついてくる
パンを求めて、互いの上によじ登って競い合ってる
後ずさりをして、近くにあったベンチの上に上がった
あんまりアヒルたちのくちばしが痛いんだもの
パンが全部なくなって、ようやく、アヒルたちも落ち着く
沼のほとりに立ちながら、アヒルたちを見ていた
ホント、ビックリしちゃった
アヒルって人間みたい
一羽の可哀想な奇形のアヒルを見ていた
他のアヒルたちに突付かれている
そのアヒルは変な色の羽根をしていた
明るい黄色じゃなくて、鈍いくすんだ黄色
半分むしり取られている
他のアヒルたちは、明らかに、それをバカにしている
ホント、人間みたい
アヒルたちのあわただしい動きに目を奪われた
三羽のオスアヒルが一羽のメスアヒルを追いかけている
オスたちはメスに乗ろうとして、地面に押し付けている
昔、先生が言ってたことを思い出した
「アヒルたちは愛し合わない
オスアヒルは群れになってメスと交尾するだけだ」
良かった、私たちが進化していて
自分の言ったユーモアに唇が歪んだ
ふう〜っと溜息をついて、とぼとぼと彼女は車に戻った
時間が経過し、彼女を現実に引き戻していく
仕事が待っている
生活が待っている
そして、彼女のご主人様も待っている
その最後のことを思い出し、彼女は歩みを速めた