男の前には、女が立っていた。
背筋をしっかり伸ばして。
視線をまっすぐに。
女は動かない。
動くことなど許されていないのを知っているから。
男は手に持った飲み物を啜った。
何気なく女から目を逸らし、窓の外を見る。
外の空間をじっと見つめる。
別の女が部屋に入ってくる。
男の前にひざまずき、飲み物を差し出す。
男はそれを取った。
かわりに、空になったグラスを女の手のひらにのせる。
そして、ひざまずく女の絹髪を優しく手で触れた。
男は、立ったままの女に合図を送った。
軽くちょっと手首を返すだけの合図。
女は即座に腰をかがめる。
両手で足首を掴むようにして、背中を丸くする。
お尻を差し出すように、男に向けている。
男は、ぼんやりと、今の環境について思いを巡らせた。
そして、それを自分に与えてくれた周りのものに感謝した。